外国人介護人材にとって、日本語は円滑に仕事をするための手段です。外国人介護人材が就労や生活で使う日本語の力を高めていくためには、理解しやすい本語を職員側も意識すると同時に、働きながら日本語を習得できるように意識することが必要です。また、在留資格ごとに求められる日本語レベルが異なることもあり、受入れ人材のレベルや到達目標を確認しながら支援していくことが必要となります。

仕事の各場面で用いられている言葉を、その場で習得していくことが、最も効果的な学習法です。言葉は使うことで上達しますので、「指示は復唱する」のように、できるだけ多く発話する機会を意図的に設けていきます。

 

やさしい日本語を使うことを心掛ける

やさしい日本語とは、 「簡単でわかりやすい日本語」ということです。

  • はっきり、ゆっくり、短い文をつないで話す
  • 主語、目的語、述語をできるだけはっきりさせせる→日本人は主語を省略しがちです
  • 伝えたいキーワード「介護の現場で必要な専門用語」を最初に使う

ワードを伝えると同時に、作業も一緒に教えることが効果的です

  • 内容を理解したかどうか確かめながら話す

理解していなくても「わかりました」と言ってしまう場合もありますので、説明したことを実際にやってもらって確認するなど、作業も一緒に教えることが効果的です

  • 最初は、できるだけ標準語で話す →「~です」「~ます」の丁寧語の使用
  • 敬語は極力使わないようにする
  • 敬語、謙譲語、丁寧すぎる日本語は、外国人介護士を混乱させます
  • 漢字の熟語より、やさしい言葉を使う。例えば「開始します」という表現を「始めます」に置き換えるなど、一般的なやさしい言葉を使う方が理解しやすくなります。
  • 文書を書くときは、漢字は極力使わず、(使う場合はルビを使う)ひらがな中心とします。

 

外国人介護職員に対する日本語教育のポイント

介護の現場で用いられている言葉を、その場でその仕事を覚え、言葉を得していくことは、最も効果的な学習方法と言えます。例えば、入浴や体を清潔にする介助をする場合、「手浴」(しゅよく 洗面器にお湯で手を洗う)「足浴」(そくよく 桶などにお湯を張り、足を洗う)「清拭」(せいしき ベッドに横になった利用者様の身体を、お湯で絞ったタオルで拭く)という日本語は、一般的な日本語とは言えず、介護作業を行いながら、覚えていくことが効果的と言えます。

聞き間違いや理解不十分なままの行動を防ぐ

外国人介護人材が理解不十分なまま利用者に対して返答をしてしまうと、誤解やトラ

ブルも起こりかねません。聞き取れなかったことや分からなかったことは再度確認をと

ったり、日本人職員を呼んでコミュニケーションをとるよう徹底しておきます。

 

日本語が上達しないと、どうしてもコミュニケーション不足なり、精神的に行き詰ったり、仕事の能率も下がり、ひどい場合は、介護の仕事をやめたくなったり、ホームシックになって、帰国ということにもなります。

外国人介護職員を受け入れている法人・事業所内だけではなく、介護養成校、日本語学校、地域の日本語ボランティアなどと連携しながら、外国人介護士に、それぞれの分野(日常会話の日本語、介護業務に必要な日本語、介護福祉士国家試験に必要な日本語)における、日本語学習のチャンスを与えていく必要があります。

 

外国人介護士の日本語学習におすすめの教材、書籍など

日本語学習に関する書籍

  • 『看護・介護の言葉と漢字ワークブック(やさしい漢字とカタカナ語)』(一般社団

法人国際交流&日本語支援Y)

※英語・インドネシア語・ベトナム語・ポルトガル語・スペイン語の語彙訳付

  • 『介護の言葉と漢字ハンドブック』(一般社団法人国際交流&日本語支援Y)

※英語・インドネシア語・ベトナム語・ポルトガル語・スペイン語対応

  • 『外国人のための 会話で学ぼう!介護の日本語』(編著:一般社団法人国際交流&

日本語支援Y 協力:公益社団法人国際厚生事業団)

※英語・ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語の 4 か国語訳付

  • 『介護用語 新人介護職員育成編―テキストと DVD で学ぶ!』
  • 『外国人のための やさしく学べる介護の知識・技術』(中央法規出版)

 

日本語学習に関する公開資料

  • 「介護の日本語」テキスト(公益社団法人日本介護福祉会)

※ホームページよりダウンロード可能

※英語・インドネシア語・ベトナム語・中国語・クメール語・タイ語・モンゴル語・ミャンマー語対応

http://www.jaccw.or.jp/home/ginou_shien.php

オンライン学習のツール例(介護の日本語)

・介護の漢字サポーター

(介護用語を検索できる。日/英/Bahasa Indonesia)

http://kaigo-kanji.com/

・介護のことばサーチ

(介護用語を検索できる。日/英/Bahasa Indonesia)

http://kaigo-kotoba.com/

・リーディングチュウ太

(日本語読解を支援するサイト。自動翻訳(日英他)、読解練習素材もある。)

http://language.tiu.ac.jp/

・チュウ太の Web 辞書

(日本語読解の Web 辞書で、介護に関する語彙も調べることができる)

http://language.tiu.ac.jp/

・日本語でケアナビ

(看護や介護の仕事をする人たちを支援する、日本語学習ツール。日/英)

https://nihongodecarenavi.jp/

出典:公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)

「2019 年度来日 EPA に基づく介護福祉士候補者受入れの手引き」

 

外国人介護職員との文化による違いの理解

言葉の問題以外に、外国人と働くためには、文化による違いが職場での意思疎通を阻む場合もあるということを理解することが大切です。なお、採用時に宗教について尋ねるのは日本人採用と同様に禁止されていますので、宗教等の配慮はあくまで勤務に影響する事柄を確認する形で行います

外国人の介護職員の多い国、ベトナム人、フィリピン人などのいくつかの国では、人前で怒られることに慣れておりません。日本人であれば、ちょっとした注意をしたつもりでも、当該外国人が、大きくプライドを傷つけられる場合があります。

一方、日本人は、意見が異なる場合、日本では相手を傷つけないよう曖昧な表現を用いますが、外国人には、その意図がわからず、理解に苦しむことがあります。

日本人職員も外国人職員も、国によるコミュニケーション方法に違いがあるということをまず、認識することが必要です。定期的に、率直に意見を言い合う場など設けて、お互いに確認しあうことが必要です。

介護の職場に限らず、日本の多くの職場では、「報告・連絡・相談」が重要とされていますが、多くの外国人介護職員の国では、そのような文化はありません。それゆえ、外国人介護士に、誰に、いつ、どこで、「報告・連絡・相談」するべきか、組織内の日本人の職員の担当者を明確にするということは、とても重要です。慣れないうちは、日本人職員側から、報告、連絡を確認し、常に相談しやすい雰囲気をつくる必要があります。言葉は使うことで上達しますので、「報告をする」「連絡をする」「指示は復唱する」のように、できるだけ多く発話する機会を意図的に設けていきます。

また、外国人の多くは、「できますか?」と聞かれたときに、「できます」と答える人が多いです。しかし、この「できます」には、「一生懸命頑張ってやってみます」というように、質問した日本人が意図していた「できます」でない場合が多いです。

ゆえに、質問を「やってみますか?」に変更し、実際に一度、目の前で、やっているところを確認してから、仕事をお願いするなどの工夫をする必要があります。

日本人職員であれば、言葉で説明し、一度やって見せれば、なんとなく理解できることでも、外国人には理解できないことがあります。簡単な日本語の説明のある、写真や図などを多用したマニュアルを作成し、それを見ながら、実際にやってみると理解が深まります。

 

休憩時間や始業時間、休暇の種類と具体的な取得方法は、ルールを定めて最初に納得

が得られるまで説明し、順守するよう求めることが重要です。外国人の多くは、日本人に比べ、時間厳守が求められない環境で育ち、時間管理の感覚が異なっている場合が多いので、この点も注意が必要です。

日本の介護施設においては、就業時間外に受入れ施設において勉強会等を行うことも多いですが、外国人留学生には、残業代がなく強制的な拘束を受けていると誤解されるおそれもあります。なぜ勉強会に参加して欲しいのかを真摯に説明して、納得をしてもらった上で参加してもらうなどの配慮が必要となります。

 


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